10代
両親や教師が最も手を焼く年代であり、半分大人であり子供であるという難しい年頃
1位
リチャード・バック、Richard Bach、 五木 寛之
かもめのジョナサン』原作。「ほとんどのカモメが、飛ぶことに関して学ぶのは、いちばん単純な事実だけだ。海岸から食べ物のあるところまで到達し、また戻ってくること」。ジョナサン・リビングストン・シーガルという名の風変わりな鳥を描いたこの寓話の中で、著者リチャード・バックは語る。「たいていのカモメにとって、大切なのは飛ぶことではなく、食べることだ。しかし、このカモメにとっては、食べることではなく、飛ぶこと自体が重要だった」。飛行は、まさにこの物語の意義を高める、象徴的行為である。この寓話に込められた究極の意味は、たとえ、群れや仲間あるいは隣人から自分の野心は危険だと思われても、より高尚な人生の目的を探求することは大切だ、ということだ(われらが愛するジョナサンもある時点で、自分の群れから追放される)。妥協せず自分の気高い理想を守ることで、ジョナサンは、超越という究極の報酬を得た。そして最後に愛と思いやりの真の意味を知るのである。ラッセル・マンソンによる幻想的なカモメの写真が、この物語にふさわしいイラストとなっている。ただし全体的なデザインは、多少時代遅れの感があるのは否めない(この作品の初版年度は1970年だった)。しかしながらこの作品に流れる精神は不朽であり、とりわけ、若者の心を惹きつけてやまない。
2位
サン=テグジュペリ、Antoine de Saint‐Exup´ery、 内藤 濯
著者の生誕100年を記念し作られた復刻版。挿絵は著者自身が描いた米オリジナル版そのままの絵が載せられている。これまで親しんできた挿絵と比べると輪郭がはっきりしていて鮮明、そのほかにも「ささいな違い」を見つけながら読み進めていく楽しみもある。
本書は、ストーリーの展開を楽しむ意味においては子ども向けだが、むしろ大人向けのメッセージに満ちていて、本来人間には「心の目」が備わっているということを呼び起こされる。その、真実を見ることのできる「心の目」をもって、大切にしていかなければならないモノを感じ取り、それを生かしていくことで人は豊かになれるはずなのだが、さまざまなことに心を奪われ見えなくなっていき、やがて見ようともしなくなる(王子が訪れた星に住む大人たちは点灯夫以外その象徴のようでもある)。キツネの言葉「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目には見えないんだよ」は著者からの、大人、そしてこれから大人になる子どもたちへの警鐘なのかもしれない。(加久田秀子)
3位
司馬 遼太郎
同じ松山で生まれ育った正岡子規と、日露戦争で活躍した秋山兄弟。子規は病と闘いながら俳諧の革新に挑み、秋山兄弟はそれぞれ日本の騎兵、海軍の技術向上に尽力した。当時最強とうたわれたロシアのコサック騎兵を打ち破るべく、ひたすら仕事に打ち込む兄好古と、文学の世界に未練を残しながらも海軍に入隊し、海軍戦術を研究し続けた弟真之。2人のまじめな努力の成果は、歴史が証明している。誰もが立身出世を目指した時代に、彼らがどうやって自分の人生の意義を見出したのか。そんな視点から読んでみるのもおもしろい。
司馬遼太郎の大河小説の中でも、本書は特に評価が高く、ビジネスパーソンをはじめ、多くの人々に読まれている。改革の時代にこそひも解きたい、そんな1冊である。(土井英司)4位
ジェームズ アレン、James Allen、 坂本 貢一
何かにつまずいた時や心が弱った時、頼りたくなるのが啓発書だ。本書は1902年に英国の作家によって記されたもので、世界に数多くある啓発書のルーツとも言われている。意外なことに、日本語版は今回が初出となる。現実がままならないのは、すべて悪しき思いによるもので、環境のせいではないと説く。結果としての成功も失敗も、その原因は必ず人間の心の奥底にある支配的な思いにあると言う。「人間は身勝手な欲望を放棄しているとき、搾取する側、される側のどちらにも属さない」という記述からは、当時の英国社会に蔓延していた閉塞感を宗教以外の論理で解消したいという狙いがうかがえる。「自己制御は熟練技能」という啓発書の基本が、1世紀前に存在していたことは興味深い。
5位
黒柳 徹子、 いわさき ちひろ
「きみは、ほんとうは、いい子なんだよ!」。小林宗作先生は、トットちゃんを見かけると、いつもそういつた。「そうです。私は、いい子です!」そのたびにトットちゃんは、ニッコリして、とびはねながら答えた。――トモエ学園のユニークな教育とそこに学ぶ子供たちをいきいきと描いた感動の名作。
6位
いもと ようこ
人は一切れのパンではなく 愛に、小さなほほえみに 飢えているのです-。世界中の多くの人々の、心のよりどころになったマザー・テレサ。折々に語られたマザー・テレサの言葉を一冊にまとめる。
7位
パウロ コエーリョ、Paulo Coelho、山川 紘矢、 山川 亜希子
羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。
8位
住井 すゑ
級友が私だけを避け、仲間はずれにする。差別―その深い罪について人はどれだけ考えただろうか。故なき差別の鉄の輪に苦しみ、しかもなお愛を失わず、光をかかげて真摯に生きようとする人々がここにいる。大和盆地の小村、小森。日露戦争で父を失った誠太郎と孝二は、貧しい暮しながら温かな祖母と母の手に守られて小学校に通い始める。だがそこに思いもかけぬ日々が待っていた。
9位 宮沢 賢治、 清川 あさみ
ビーズや布、クリスタル、糸で織りなす宇宙。『幸せな王子』『人魚姫』につづく、清川あさみ、絵本シリーズ最新作がついに完成。水素よりも透明な銀河の水、サファイアやトパーズの河原、眼もさめるような白い十字架、楽器の旋律森、りんごと薔薇の匂いがする風、きらきら燃えるとうもろこしの地平線……。鳥を捕る男、踊るインディアン、ハープのような孔雀、タイタニック、跳ねる鱒、真っ赤な蠍……。
宮沢賢治が言葉で描いた空前絶後の情景が、ページをめくるたび、目の前に鮮烈に立ち上がる--。
宮沢賢治が言葉で描いた空前絶後の情景が、ページをめくるたび、目の前に鮮烈に立ち上がる--。
10位
コナン・ドイル、 延原 謙
シャーロック・ホームズ短編集の中でも、著名な作品が多数収録されている一冊。
10位
梨木 香歩
「西の魔女」とは、中学生の少女・まいの祖母のこと。学校へ行けないまいは、田舎の祖母のところで生活することに。まいは、祖母の家系が魔女の血筋だと聞く。祖母のいう魔女とは、代々草木についての知識を受け継ぎ、物事の先を見通す不思議な能力を持つ人だと知る。まいは自分も魔女になりたいと願い、「魔女修行」を始める。この「魔女修行」とは、意志の力を強くし、何事も自分で決めること。そのための第一歩は規則正しい生活をするといった地味なものだった。野苺を摘んでジャムをつくったり、ハーブで草木の虫を除いたりと、身近な自然を感じながらの心地よい生活が始まる。次第にまいの心は癒されていく。魔女はいう。「自分が楽に生きられる場所を求めたからといって、後ろめたく思う必要はありませんよ。サボテンは水の中に生える必要はないし、蓮の花は空中では咲かない。シロクマがハワイより北極で生きるほうを選んだからといって、だれがシロクマを責めますか」そしてまいは、この「西の魔女」から決定的なメッセージをうけとるのだった……。
10位
日本戦没学生記念会、 わだつみ会
酷薄な状況の中で,最後まで鋭敏な魂と明晰な知性を失うまいと努め,祖国と愛する者の未来を憂いながら死んでいった学徒兵たち.昭和24年の刊行以来,無数の読者の心をとらえ続けてきた戦没学生たちの手記を,戦後50年を機にあらためて原点に立ち戻って見直し,新しい世代に読みつがれていく決定版として刊行する.